2010年11月11日
長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤「イナビル吸入粉末剤20」の勉強会をしました。

長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤
「イナビル吸入粉末剤20」の勉強会をしました。

H221029()                                 by (Ms)M・I @ 東畦店

イナビルの基本情報
²  20109月に承認された純国産吸入剤
²  1回投与で完結する、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症治療薬
²  商品名:イナビル吸入粉末剤20
      (INAVIRDRY POWDER INHALER
²  一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
       
Laninamivir Octanoate Hydrate
²  薬効分類名:Long Acting Neuraminidase Inhibitor 
      (長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤)
²  INAVIR 命名の由来
       I:1          “1回の治療で”
       NA:ノイラミニダーゼ  “NAを阻害し”
       VIR:ウイルス(virus)  “ウイルスの増殖を抑える”

効能・効果

 A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療

用法・用量
成人:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40咾鮹渦鶺枡投与する。
小児:10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20咾鮹渦鶺枡投与。   
   
10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40咾鮹渦鶺枡投与する。
   体重のしばりはなく、吸入できれば幼児でもかまわない。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
  ・症状発現後、可能な限り速やか(発症後48時間以内)に投与を開始することが望ましい。
  ・本剤は、1容器あたりラニナミビルオクタン酸エステルとして20咾魎淪し、
   薬剤が2箇所に充填されている。成人及び10歳以上の小児には2容器、
    10歳未満の小児には1容器を投与すること。
  
・薬剤が作用部位に残りやすくなるので、使用後はうがいをしない方が良い。

インフルエンザウイルスについて
・インフルエンザの感染経路は、インフルエンザウイルス感染患者の咳やくしゃみなど
 のしぶきに含まれるウィルスを吸い込む「飛沫感染」が主となる。 
潜伏期間は1~3日間で、
 インフルエンザウイルスは呼吸とともに鼻腔や咽頭から
体内に入り込み、気道粘膜に吸着
 して細胞内へ侵入し、上気道から下気道、さらには
肺で急激に増殖していく。
・インフルエンザウイルスの増殖スピードは非常に速く、1個のウイルスが8時間後には100個、
 16時間後には1万個、24時間後には100万個になると言われているので、ノイラミニダーゼ
 阻害薬はできるだけ早期
(発症後48時間以内)に投与を開始することが重要となる。

インフルエンザウイルスの構造
 インフルエンザウイルスは、エンベロープ(ウイルスを覆う脂肪膜)を持ち、
 直径
100nm程度で、表面には「ヘマグルチニン(HA)」及び「ノイラミニダーゼ(NA)
 と呼ばれる
10nm程度の2種類のスパイク(突起)を有する。

インフルエンザウイルスの増殖メカニズム
 インフルエンザウイルスは、細菌とは異なり自分自身で増殖することはできず、
 宿主となる細胞に侵入して増殖し、その細胞内から子ウイルスを放出させて次々に
 感染して
いく。
      吸着:ウイルス表面のヘマグルチニンが、気道粘膜細胞上のシアル酸と結合して、
  宿主細胞に吸着する。
      侵入:宿主細胞は、吸着したウイルスをまるごと細胞内へ取り込む。
      脱殻:ウイルス内の遺伝子情報(RNA蛋白複合体)を放出し、核内へ移動させる。
      ウイルスRNA・蛋白質の合成:核内に運ばれたRNA蛋白複合体から、
  新たに大量の
RNA蛋白複合体が形成されて、細胞表面へと輸送される。
  それに並行
して、ヘマグルチニンやノイラミニダーゼも細胞表面へと輸送される。
      出芽:細胞表面に輸送されたRNA蛋白複合体やヘマグルチニン、ノイラミニダーゼなどは、
  細胞膜近くで会合し、ウイルス粒子が形成され、細胞膜から出芽する。
      放出:ノイラミニダーゼが宿主細胞上のシアル酸を切断し、子ウイルスを宿主細胞から
  放出し、次の細胞へと感染を拡げていく。
ノイラミニダーゼ阻害薬は、宿主細胞で増殖・産生した子ウイルスが細胞外に放出される際、ノイラミニダーゼによるシアル酸の切断を阻害して子ウイルスの放出を抑え、感染の拡大を防ぐ。

なぜイナビルの治療が1回で完結できるのか?

 イナビルはラニナミビル(活性代謝物)のプロドラッグで、吸入投与後「気管」や「肺」の上皮細胞
 に存在する加水分解酵素によって活性代謝物のラニナミビルに変換され、そのまま長時間
 にわたって貯留する。
  Cmax 6.41(nmol/g)  Tmax 3.0(hr)  t1/2 41.4(hr

成人患者に対する有効性の検討
²  インフルエンザ罹病時間を比較してみると、イナビル40啖欧肇セルタミビルリン酸
 塩群は同様に推移し、イナビルは
1回の吸入投与で125日間反復経口投与の
 オセルタミビルリン酸塩群と同等の効果を示した。
²  ウイルス力価の比較では、最終的(6日目)にはイナビル40啖欧皀セルタミビルリン酸
 塩群もウイルスが検出された患者はほとんどみられなかったが、
 3日目ではイナビル40啖欧諒がオセルタミビルリン酸塩群よりもウイルスが検出された
 患者の割合が
有意に低く、イナビル投与により早いウイルス消失が期待された。

小児患者(10歳未満に対する有効性の検討

²  インフルエンザ罹病時間の比較では、イナビル20啖欧諒が、オセルタミビルリン酸塩群
 よりも
1日以上有意に早く回復させることができた。
²  ウイルス力価の比較では、3日目では差が生じなかったが、6日目でイナビル20啖欧
 方がオセルタミビルリン酸塩群より早くウイルスの消失がみられた。
 成人と異なり「
6日目」で有意差がついた理由としては、小児では成人と比較して相対的に
 獲得免疫が未熟なため、一般的にウイルスが残存しやすいためと考えられる。

イナビルの抗ウイルス作用
・A型及びB型インフルエンザウイルスA/H1N1型インフルエンザウイルスの
 オセルタミビル耐性株
・新型インフルエンザウイルス(パンデミック(A/H1N1)2009
・高病原性鳥インフルエンザウイルス(A/H5N1型)
・既知のノイラミニダーゼ亜型(N1N9)動物インフルエンザウイルスなど
 さまざまなウイルス型・亜型に対して、イナビルは良好な抗ウイルス作用を示した。

なぜ薬剤耐性株が出現するのか? 耐性化のメカニズム
 A/H1N1型インフルエンザウイルスのオセルタミビル耐性株(H274Y変異株)では、
 オセルタミビル(活性代謝物)の疎水基に対して、ノイラミニダーゼの相互作用部位
 に
変化が生じて結合力が低下するため、感受性が減弱すると考えられる。
 一方ザナミビルは、H274Y変異株においてもグリセロール基と相互作用部位との
 結合力が妨害されることはなく、オセルタミビル
(活性代謝物)には存在しない
 グアニジノ基と
相互作用部位との結合も存在するため、ザナミビルと相互作用部位
 との結合力は低下せず、結果、オセルタミビル耐性ウイルス
(H274Y変異株)にも感受性
 があると考えられる。
ラニナミビルにもザナミビルと同様、グリセロール基と
 グアニジノ基があるので、
ザナミビルと同じような効果が期待できるのでは
 ないでしょうか?

抗インフルエンザウイルス薬服用後のウイルスの残存について
 一般的にインフルエンザウイルス感染症は、熱などの症状が改善してもウイルスが
 残存していると言われている。にもかかわらず、インフルエンザウイルス感染患者は、
 抗インフルエンザウイルス薬を服用して熱が下がったり症状が軽減したりすると、
 「服用を中止してしまう傾向」があるように思われる。これでは、ウイルスがさらに残存し、
 さまざまな問題が出てくるのではないでしょうか?

イナビルの安全性
 成人・小児とも、対照薬のオセルタミビルリン酸塩と比較して、副作用発現率に
 大きな
違いは認められない。また、2040咾良作用発現頻度にも大きな差はなく、
 投与量の増加による副作用発現率の増加も認められない。
 主な副作用は、下痢、悪心、嘔吐など。

異常行動・言動について
 2009年のデータによれば、オセルタミビルの服用有無にかかわらず、10%程度の患者に
 異常行動が認められているが、ラニナミビルの服用試験での発現率は、
9歳以下で2.4%
 10歳代で5.0%と、ラニナミビルの服用によってインフルエンザ異常行動・言動の発現率
 が増加する傾向は認められなかった。

イナビル製剤の安定性
 イナビルの吸入容器及び製剤は、現時点で16ヶ月間まで安定であることが確認されており、
 試験は現在も継続中とのことです。

イナビルの吸入容器について
・イナビルの吸入容器には薬剤が充填されているので、事前操作が不要。
 薬剤トレーをスライドさせない状態で軽く“トントン”と叩き、容器内の薬を下に
 集めた状態で、薬剤トレーのラベルをはがさず、矢印方向にしっかりと端までスライドさせて、
 →△畔卻ずつ吸入する。この時、底にある空気孔をふさがないように
持つことに注意し、
 吸い残しのないように→◆↓→△
2回ずつ吸入することが望ましい。
1容器に20啼っているので、10歳以上で2容器、10歳未満で1容器を1回分として吸入する。
1回で完結する吸入剤なので、これでイナビルによる治療は終わり。

まとめと感想
 
 イナビルの治療は
1回で完結するので、症状改善による服薬中止や服薬忘れを懸念する
 必要がないのは良い点だと思いました。しかし上手に吸えなかった時、
 125日間服用の薬だと「また次がある」という安心感があるけれど、1回きりだと
 「これで効くのだろうか?」と不安になることもあるのではないでしょうか?
 
 また吸入容器のトレーの操作が固くて、力の弱いお年寄りや小さい子供さんには難しい
 ように思いました。 この2点の不安を解消するために、「薬局に薬を受け取りに来られた時に、
 その場で説明しながら吸入していただく」というのはどうでしょうか?
 1回だけの服薬でいいし、早めの方が効果的でもある訳ですから・・・。
 患者さんの状態に合わせて従来の薬と使い分けながら、より効果的なインフルエンザの
 治療ができればいいなと思いました。