2017年02月08日
アルコール依存症 断酒補助剤「レグテスト」の勉強会をしました。
 
岡山の街の健康応援団

 岡山市の元気でやりがいのある調剤薬局
はな薬局”by A.I.E.(Attitude Is Everything.)
  
アルコール依存症 断酒補助剤「レグテクト」の勉強会をしました。
                                 
                               H28年12月15日
                         By M.H.@東畦店 
                      
アルコール依存症 断酒補助剤
レグテクト錠333mg(アカンプロサートカルシウム製剤) 

アルコール依存症とは
アルコールは麻薬、覚せい剤などと同様に依存性のある物質です。精神依存、身体依存ともに強くアルコール依存症から回復するためには生涯にわたって酒を断つしかありません。なぜなら依存症になってしまうと、コントロールして飲酒するのは不可能に近いからです。 

作用機序
アルコール依存症では中枢神経系の主要な興奮性神経であるグルタミン酸作動性神経活動が亢進し、興奮性神経伝達と抑制性神経伝達の間に不均衡が生じると考えられています。レグテクトの作用機序は明確ではないもののアルコール依存で亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで神経伝達の均衡を回復し、飲酒欲求を抑制すると推察されています。

効能効果
アルコール依存症患者における断酒維持の補助
<効能効果に関連する使用上の注意>
1アルコール依存症の診断は、国際疾病分類等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、
  基準を満たす場合のみに使用すること。
 
  診断基準 下記6項目のうち3項目を満たすこと
 
    飲酒したいという強烈な欲求、脅迫感(渇望)
  ②飲酒制限の不能
 
    離脱症状  
  ④体制の増大  
  ⑤飲酒やそれからの回復に1日の大部分の時間を
消費してしまう
   飲酒以外の娯楽を無視(飲酒中心の生活) 
  ⑥精神的、身体的問題
が悪化しているのも関わらず、断酒しない(負の強化への抵抗)
2心理社会的治療と併用すること。
3断酒の意思のある患者のみ使用すること。
4離脱症状がみられる患者では、離脱症状に対する治療を終了してから使用すること。
 (本剤は離脱症状の治療剤ではない)

 用法用量
通常成人にはアカンプロサートカルシウムとして666mgを1日3回食後に経口投与する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
1空腹時に投与すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため
  食後に服用するように指導すること。
2レグテクトの投与期間は原則として24週間とすること。治療上の有益性が認められる
  場合にのみ投与期間を延長できるが、定期的に投与継続の要否について検討し、
  漫然と投与しないこと。

 禁忌
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
高度の腎障害がある患者(排泄遅延により、高い血中濃度が維持する恐れがある) 
  
慎重投与
軽度から中等度の腎機能障害のある患者
自殺念慮または自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
高齢者(血中濃度が上昇する恐れがある)
高度の肝障害のある患者

 副作用
重大な副作用
アナフィラキシー(頻度不明)
血管浮腫(頻度不明):舌腫脹、リンパ節腫脹等の症状を伴う血管浮腫が現れることがあるので、観察を十分行い、異常が認められた場合は直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと。

その他の副作用
下痢(5%以上)、傾眠・腹部膨満・嘔吐(1~5%未満)、不安・頭痛・精神運動亢進・便秘・悪心・鼓腸・過敏性腸症候群・口内炎・湿疹・乾癬・浮腫・末梢性浮腫(1%未満)腹痛・蕁麻疹・掻痒感・斑状丘疹状皮疹・不感症・勃起不全・リビドー減退亢進(頻度不明)

 過量投与
過量投与時にみられる主な症状は下痢であると考える。
解毒薬は知られていない、症状において適切な処置を行う。
国内臨床試験では過量投与は認められていません、海外ではレグテクト2gで腹痛、レグテクト26.6gとアルコールの摂取では下痢が認められましたがいずれも回復しました。 

使用上の注意
腸溶性のフィルムコーティング錠であるためかんだり割ったり砕いたりせずそのまま服用するように指導すること。

臨床成績
対象および症例数WHOによる「疾病および関連保健問題の国際統計分類依存症候群の診断基準」によりアルコール依存症と診断された物で、断酒意思があり、心理社会的治療を併用する20歳以上の患者。有効性解析対象数327例(プラセボ群:164例、レグテクト群:163例)

方法
レグテクトまたはプラセボを1日3回(1998mg/日)経口投与した。投与期間は24週間とし、投与期間後に設定した24週間の追跡観察期間中は投与しなかった。また試験期間中の抗酒薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、アルデヒド反応を起こす薬剤の併用は禁止した。

試験結果
投与期間での完全断酒率はレグテクト群47.2%(77/163例)プラセボ群36.0%(59/164例)であり、レグテクト群がプラセボ群と比較し有意に高かった。 

薬物動態
・単回投与した場合の血漿中アセチルホモタウリン濃度は4.46.8時間で最高に達し、
 
14.920.4時間の半減期で消失した。静脈内および経口投与時のAUCから算出した
  バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)は11%であった。
・血漿中のアセチルホモタウリン濃度は、反復投与2日目からほぼ一定で推移し、
  体内動態は速やかに定常状態に達する。
・尿中、および糞中の代謝物は尿および糞中からは未変化体(アセチルホモタウリン)
  のみが検出され、アカンプロサートカルシウムはヒトの体内で代謝されないことが
  示唆された。
・投与されたアカンプロサートカルシウムの88.2%は糞便中に排出された。
・ジスルフィラム(ノックビン)、ジアゼパム(セルシン)、
  イミプラミン(トフラニール)はアカンプロサートカルシウムの薬物動態に
  影響を及ぼさない。またアカンプロサートカルシウムはアルコールの体内動態
  に影響を及ぼさない。
 

薬効薬理
・エタノールの自発摂取量を抑制。
・離脱後のグルタミン酸量が低く推移。
・グルタミン酸刺激によるLDH(乳酸脱水素酵素)漏出の増加を抑制。
・各種神経伝達物質受容体、イオンチャンネル、及びトランスポーターに対する
  レグテクトの影響は、顕著な作用はないまたは影響は認められない、である。

 一般薬理試験及び毒性試験
・中枢神経系に及ぼす影響(ラット・マウス)
 
ラットにレグテクト2000/㎏を経口投与したときに一過性の体温低下が認められたが
  それ以外の中枢作用は認められなかった。
・呼吸系に及ぼす影響(ラット)ラットにレグテクト2000/㎏を経口投与したときに
  呼吸数減少、1回換気量増加及び分時換気量増加が認められた。
・心血管系に及ぼす影響(in vitro、イヌ)In vitro試験において300μmol/Lまで
  ヒト
ether-a-go-go関連遺伝子(hERG)電流やイヌ心臓プルキンエ繊維における
  活動電位波形への影響はなく、イヌへの経口投与においても
1000/kgまで心拍数、
  血圧および心電図パラメーターに影響はなかった。
・反復投与毒性試験(ラット、イヌ、サル)ラット、イヌ、サルへの反復経口投与
  において、軟便、下痢便なのどの便性状の変化が認めらえた他、イヌでは嘔吐が、
  ラットでは尿 
pH の低下、尿中蛋白及びヘモグロビンの増加、
 
BUNの増加が認められた。高用量を投与した際には、イヌでは嘔吐物は便に
  赤色物の混入が認められ、ラットでは腎障害による死亡が認めらえた。
  また、レグテクトはカルシウム塩であるため、ラットで血中および尿中カルシウム
  の増加が認められたのに加え、イヌでも尿中カルシウムの増加が認められた。
  高用量を投与したラットでは腎臓を含めた各器官・組織への沈着が認められた。
・生殖発生毒性試験(マウス、ラット、ウサギ)
   
<受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験>
   
マウスにおいてレグテクト投与の影響は認められない。
  
<胚・胎児発生に関する試験>マウス及びラットにおいてレグテクト投与の影響は
    認められなかった。
ウサギにおいて母動物に軟便及び肛門周囲の被毛の汚れ、
    摂餌量の減少及び体重の増加抑制が認められたが、母動物の生殖能及び胎児には
    異常は認められなかった。
  
<出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験>
   
マウス、ラットにおいてレグテクトの投与による影響は認められなかった。
・遺伝毒性試験(in vitro、マウス)
  
レグテクトは生体内で遺伝毒性を示す可能性は低い
・がん原性試験(マウス、ラット)マウスを用いた試験ではレグテクトの投与に関連した
  腫瘍の発生は認められなかった。また、ラットに対して明らかな発がん性
  を示さなかった。
・依存試験(サル、ハト、マウス)
レグテクトは精神依存形成能を有さないと判断された。 

まとめ
 
レグテクトが発売される以前、アルコール依存症治療薬は抗酒薬(嫌酒薬)と呼ばれる薬が使用されていました。アルコールは肝臓で代謝されアルコール➝アセトアルデヒド➝酢酸となり体外へと排泄されます。この代謝過程でできるアセトアルデヒドが悪酔いの原因です、このアセトアルデヒドを蓄積させ悪酔いの状態にするのが抗酒薬です、抗酒薬としてシアナマイド、ノックビンがあります。抗酒薬は飲酒欲求を抑える薬ではないので適切な服用が難しい薬でした。

 
アルコール依存症を克服するためには断酒をしなくてはなりません、アルコールを少しでも飲んでしまえば又断酒前の状態に戻ってしまいます。一番重要なのは本人の意思で、又それをサポートする自助グループへの参加もかなりの支えになります。アルコール依存症を克服する率はサポートがあるかないかでかなり差が出てくるようです。

 
アルコール依存症の入院治療後の断酒率は退院時には高率ですが退院後1224か月までに約20%に減少してその後大きな変化はありません。今回のレグテクトを退院後に服用続けると臨床成績でも書いてあるように47.2%とかなり断酒率の減少が抑えられています。飲酒欲求はなくなったと思ったらいきなり波が押し寄せてくるように起こることがあります、その周期や強さは個人差があり人と比較して自己判断するのは危険です。薬を自己判断で中止することがないようにしなくてはなりません。治療の継続に意味があることを本人に理解させていくことが重要です。投薬する薬剤師は患者様にきちんと薬を継続してもらえるようにサポートをしなければいけません。

 
 今回レグテクトの勉強会をして改めてアルコール依存症についても勉強できました。最近子供が中学の授業でアルコール依存症について勉強したと言っていた事を思い出しました。アルコール依存症がいかに恐ろしい病気であるかを子供の頃から教えていくことは改めて重要なことであると実感しました。
 
私も薬剤師としてアルコール依存症についてきちんと理解し、禁酒をサポートする一員となれるよう頑張ります。


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