2009年12月07日
「選択的DPP-4阻害剤:グラクティブ」の勉強会をしました。

グラクティブの勉強会をしました

2009.12.2 @東畦店 by.T.M 

 

グラクティブ(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物):選択的DPP-4阻害剤


 
○ インクレチンとは・・・

食事摂取に伴い、消化管から分泌され膵β細胞からのインスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称。現在GIPgastric inhibitory polypeptide)と、GLP-1glucagon-like peptide-1)の2種類が同定されている。

 

 

GLP-

GIP

分泌される
場所

十二指腸・上部小腸のK細胞
から
放出される

小腸と大腸のL細胞から放出される

膵作用

血糖依存的インスリン分泌促進

血糖依存的インスリン分泌促進

血糖依存的グルカゴン分泌抑制

 

膵β細胞増殖の促進

膵β細胞増殖の促進

膵β細胞死の抑制

膵β細胞死の抑制

膵外作用

胃排泄遅延

脂肪蓄積

食欲抑制

骨芽細胞でのCa蓄積

  
★ 血糖コントロールにおけるインクレチンの役割 ★ 


食物摂取 → 消化管からの活性型インクレチン
GLP-1GIPの放出 →

 

 *  膵臓β細胞からのインスリン分泌促進 → 抹消組織によるグルコース
    取り込み↑

 *  膵臓α細胞からのグルカゴン分泌抑制 → 肝臓でのグルコース産生↓

 

→ 空腹時及び食後の血糖値低下

 

●インクレチンは膵β細胞にあるそれぞれの受容体に結合し、インスリン分泌を促進するが、この作用はSU剤によるインスリン分泌促進作用とは異なる経路である。

 

●インクレチンによる血糖効果作用は血糖依存性であり、血糖値が低い状態でインクレチン刺激を行ってもインスリン分泌量は増加しないが、血糖値が高い状態ではインスリン分泌量が顕著に増加する。

→血糖が高いときだけインスリン分泌を促進するため低血糖を起こしにくい。

 インクレチン効果:

健康成人に血糖値が同程度となるよう調整してブドウ糖を経口投与あるいは経静脈内投与すると、経口投与をした方がインスリン分泌量は高くなることが知られている。これは、経口投与の場合、血糖値の上昇に加え、消化管から分泌されるインクレチンに反応して膵β細胞からのインスリン分泌が促進されるためと考えられる。
健康成人では経口ブドウ糖投与に対するインスリン分泌反応の6070%がインクレチンの作用によるもの(インクレチン効果)だが、2型糖尿病患者におけるインクレチン効果は、約30%と健康成人と比較して低下することが示されている。


 
では、2型糖尿病患者にインクレチンを投与すればいいのでは?? 


→生体内では
DPP-4dipeptidyl peptidase-4)というタンパク分解酵素によって短時間で不活化されてしまうため、インクレチンそのものを投与しても効果は期待できない

 

そこで考えられたのが、

  DPP-4の作用を阻害するDPP-4阻害薬 → グラクティブ

  DPP-4によって不活化されないペプチド、GLP-1受容体作動薬 
(注射薬で来年くらいに発売される予定?)

 

 

 インクレチン −−−−−−−−−−−−−→ 不活性化
       ↓            DPT−4
                ↓                                   
(酵素阻害)

 生理作用発現        ←−−−阻害薬 グラクティブ

 
○ グラクティブの用法・用量

成人に対して、50mgを11回服用。100mgまで増量可。

 
○ グラクティブの特徴

 
11回、食前・食後のいずれでも服用可能

低血糖時には作用を示さないため、低血糖を起こしにくく、いつでも服用可。

ただし添付文書上では時間指定は無いものの、有効血中濃度に入っているのが50mgで約16時間なので、寝る前に服用すると夕食に対する効果は弱くなってしまうと思われる。


 
長期(52週)にわたり安定したHbA1C改善効果が持続した

SU剤などでは長期に投与していると徐々にコントロールが悪化するのがデメリットだった。しかし改善効果は約0.60.8%であり、SU剤に比べると弱い。

→単剤でコントロール不良の場合はSU剤、チアゾリン系、ビグアナイド系との併用が推奨されている。(インスリン、α−GIとの併用は現在試験中。今の段階では併用不可)
初期の段階から使ってもらいたい。 コントロール不良(HbA1C10%以上)の場合は他の薬剤などでコントロールしてからの使用が良いと思われる。


 
長期(52週)に投与しても体重の増加が認められなかった

GLP-1の食欲抑制作用によるものと、GIPによる脂肪蓄積作用によるものが相殺されたためと考えられる。GLP-1受容体作動薬では体重が減少することが知られている。

 

腎排泄型であり、中等度腎機能障害のある場合は用量調節が必要(重度の場合は禁忌)

50mg単回投与でAUCが約2.3倍上昇する。

 副作用について

l  国内試験で最も多いのは胃腸障害3.2

l  低血糖は他剤との併用で2.1%、単独で1.0% 
→ 低血糖を起こしにくい薬剤ではあるが注意は必要

l  重大なものは、海外での報告で急性膵炎、アナフィラキシー反応、SJSがある。

 ○ 考察

既存の薬剤とは全く異なる作用機序を持つ薬剤であり、これまでの治療薬のデメリットを様々な点で補うことができるという点で期待の持てる薬剤だと思われる。ただ血糖降下作用としてはさほど強いものではないので実際にはごく初期の段階か、他の薬剤で治療中だがあともう少しHbA1Cが下がれば、という方に他剤との併用で使われる可能性が高いのではないかと思われる。まだ実験段階ではあるが、β細胞の増殖促進と細胞死抑制が示されており、これが実際に臨床でも証明されれば膵臓保護の目的で長期にわたり使用される可能性も充分あると思われる。


 
2009年12月03日
「リフレックス錠」の勉強会をしました。

ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤

「リフレックス錠15咫廚諒拔会をしました

 

2009/08/04()   東畦店 M・I(♀)

 リフレックス錠<ミルタザピン錠> NaSSA 


ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬

Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant
抗うつ薬の新しい分類に属する最初の抗うつ薬。

 
1994年にオランダで最初に発売され、現在すでに93ヶ国で広く臨床使用されている薬剤で、日本が94番目の発売となる。四環系の抗うつ薬と類似の化学構造を持つが、SSRISNRIを含めた従来の抗うつ薬に共通する、セロトニン(5-HT)やノルアドレナリン(NA)、ドパミンなどのモノアミン再取り込み阻害作用を認めない。セロトニン及びノルアドレナリン神経の活性を高めることにより、セロトニンとノルアドレナリンの放出を促進し、抗うつ効果を発揮する。 さらに、セロトニン5-HT2受容体,-HT受容体及びヒスタミンH受容体に対する強力なアンタゴニストとして作用する。 


作用機序

  シナプス前αアドレナリン自己受容体及びヘテロ受容体を阻害することにより、中枢神経におけるシナプス終末からのノルアドレナリン及びセロトニンの放出を増大させ、抗うつ効果を発揮する。

  シナプス後セロトニン受容体において5-HT2及び5-HT3受容体を阻害するため、性機能障害や消化器症状等の副作用が軽減され、それにともない抗うつ効果に関連する5-HT受容体が選択的に活性化される。

  ヒスタミンH受容体を阻害することにより睡眠障害にも効果がある半面、
 傾眠などの副作用 も投与初期にはある。
 

 
ミルタザピンの効果

HAM--17(ハミルトンうつ病評価尺度)スコア推移で比較してみたところ、SSRIより効果発現は早く、三環系抗うつ薬と同等の抗うつ効果があることを示した。

またプラセボとの比較でも、本邦で初めて抗うつ効果の優越性が検証された。

投与1週目で睡眠障害が改善され、

投与3週目で不安・身体化症状の改善がみられ、

投与5週目で抗うつ気分や精神的不安などが改善された。

52週投与完了症例においても、速やかな改善効果と寛解の維持が認められた。

 

  安全性

  主な副作用は傾眠、口渇、体重増加、倦怠感であるが、90%以上が「軽度」なものであり、その多くは投与初期に認められた。また服薬の継続にともなう副作用の増加は認められなかった。

  主として肝薬物代謝酵素CYP1A2,CYP2D6及びCYP3A4により代謝されるが、併用薬の肝薬物代謝酵素は阻害しないため、併用薬の代謝に影響は与えない。

 

  効能・効果

うつ病・うつ状態

 

  用法・用量

通常、成人にはミルタザピンとして1日15咾鮟藉用量とし、1530咾鬘影1回就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ1日45咾鯆兇┐覆と楼呂播宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として15咾困長圓Δ海函

 

まとめ

ミルタザピンは優れた有効性と速効性を示しながら、長期投与による効果の持続と安全性が証明されている薬剤のようです。睡眠障害の改善も場合によっては日中の眠気や過鎮静につながるかもしれませんが、効果面の利点がリスクを上回るものであってほしいと思います。

SSRISNRIで効果が不十分だった場合の、第2選択薬として期待できるのではないでしょうか。また場合によっては、第1選択薬にもなりうる薬剤ではないかと思いました。

 

            (参照 最新精神医学13巻5号2008年9月)